標準報酬月額について

1.社会保険では、被保険者の給与月額を標準報酬月額でみています

健康保険と厚生年金(社会保険)の世界では、被保険者の毎月の給与金額を、範囲で区切った中のグループ単位の代表的な金額で把握しています。
例えば、給与月額が21万円から23万円未満の方は、一律で22万円とみています。

この22万円の金額を、「標準報酬月額」と呼びます。

この様に、健康保険と厚生年金の制度上は、実際の給与月額ではなく、全部で50の範囲に区分した、標準報酬月額で記録しています。

最近では、「年金定期便」に、厚生年金加入中の標準報酬月額が記載され、送付されていますから、目にした方も多いでしょう。

標準報酬月額の決定の基礎となる、金額の区分について、その範囲の事を、等級とも呼びます。
この等級は、50区分と前述しましたが、これは、健康保険の場合です。
厚生年金には、30区分しかありません。

厚生年金の場合は、一番下の等級が低い金額に向かって、健康保険より広い範囲となっており、
また、一番上の等級が高い金額に向かって、健康保険より広い範囲となっております。
こうして、健康保険よりも少ない区分で等級しています。

2.標準報酬月額制度の必要性

社会保険制度の中で、標準報酬月額方式が採用されている理由は、事務手続き上の効率性を求めているからでしょう。
本来なら、その月ごとの実際の給与月額をそのまま記録していけば、最も正確な内容となります。しかし、給与支払者が、全ての被保険者の毎月の給与月額を全部届け出る、という事務作業には、物理的に無理が生じます。

仮に、その様な制度を実施したら、どんどんと届け出漏れ期間が生じ、制度の運営に支障を来してしまう事でしょう。そして、その届け出漏れを請求し、記録を行なう行政側の負担も膨大なものとなります。

つまり、標準報酬月額という制度の採用により、事業者側、行政側、それぞれに圧倒的な事務の効率性に繋がる事となります。

社会保険の中では、このような記録上の作業、給付の作業、徴収の作業、とたくさんの業務が有りますので、全てにおいて、滞りなく運営し、社会保険を担っていく上では、標準報酬月額制度は、欠かせないものと言えます。

3.標準報酬月額はその被保険者の標準的な給与月額を指しています

標準報酬月額は、一見すると、ある等級の範囲内にある全ての方を、一律、特定の標準報酬月額とする、という使われたかの為に存在している、と感じられる部分が有ります。
例えば、社会保険料に関する保険料金額の一覧表を見る際の考え方から、その様な見方に繋がる事でしょう。

この考え方に沿った場合、ある等級の範囲内にある方を、一律の報酬とする為、その範囲の方の標準的な報酬月額が、標準報酬月額である、と感じてしまいます。
しかし、この考え方は、標準報酬月額制度の本来の趣旨とは外れてくるものです。

標準報酬月額とは、その被保険者のその期間の標準的な報酬月額を差している、と考えるべきでしょう。

実際に支払われた月々の報酬を、その都度、全部届け出の上、記録する事が現実的ではない為、ある期間において、その被保険者に支払われた報酬月額はこの程度であったとみなし、標準的な報酬月額で記録上の金額と採用している事となります。

標準報酬月額の決定される時期は、3つしかありません。
該当する手続きを実施した際に、決定が行なわれます。一度決定されると、次の手続きによる決定がされるまで、その標準報酬月額が継続します。
この決定が行なわれる間の報酬について、標準的な報酬の月額として、標準報酬月額が採用されるのです。

4.標準報酬月額が決定される手続き

まず、毎年同じ時期の実際の支払い額により、標準報酬の決定がされる定時決定が有ります。
これは、算定基礎届けとも言われます。
1年に1度、手続きが必要となり、書類提出の時期は、7月上旬です。こちらの手続きにより、届け出る期間は、4月から6月までの3ヶ月間です。この時期に実際に支払われた報酬月額を届け出ることになります。

算定基礎を届け出ることにより、定時決定が行なわれ、標準報酬月額が定められます。
この定時決定により、9月からの1年間の標準報酬月額が記録される事となります。

次に、随時改定という制度が有ります。
随時改定は、定時決定が行なわれる時期までの途中に、報酬月額が大きく変動した際に行なわれます。
具体的には、定時決定が、1年に1度、一定の時期に行なわれますので、その時期までに報酬が大きく変わった場合、反映される時期がかい離する事を防止する為に、こちらの随時改定により、要件を満たした場合、標準報酬月額を随時、変更します。
なお、随時変更とは、月額変更届を提出する事により実施されます。

随時改定により決定された標準報酬月額は、その時期が、1~6月までの場合はその年の8月まで有効となり、7~12月までの場合は翌年の8月まで有効となります。

上記の様に、標準報酬月額は、定時決定と随時改定を組み合わせることにより、できるだけ実際の報酬月額に沿った金額で記録される事が可能となっています。

そして、最後に、資格取得時決定が有ります。
この方式による標準報酬月額の決定は、その事業所の社会保険に、新たに被保険者が加入した場合に、適用されます。

資格取得時決定は、社会保険への加入後の見込み報酬月額により、行なわれます。
手続きを行なう際には、実際の報酬の支払い前となりますので、見込み金額しか分かりません。
その為、残業代なども含めたこの見込みの報酬月額により、決定されます。

定時決定や随時改定が、実際の支払い済の金額により、手続きが行なわれるのに対して、資格取得時決定は、まだ、支払い時期が到来していない報酬を前提に行なわれます。その為、資格取得時決定では、見込みで届け出た報酬月額が、実際の報酬と相違してしまう事が有ります。その為、資格取得時報酬月額訂正届という手続きの制度があり、この場合の訂正を行なう事ができます。 

5.標準報酬月額により給付が行なわれます

社会保険制度により記録されている標準報酬月額は、その内容を残す事が目的ではありません。

そもそも社会保険は、世の中(社会)全体で運営されている保険制度です。
ケガや病気、出産・育児、老衰、障害を負った時、死亡等の際に補償を行なっています。
この補償を行なう際の基礎データとして、標準報酬月額が利用されます。

ケガや病気、出産・育児の際、要件を満たすと、補償として給付が行なわれます。この給付は、日ごとに要件を満たしたかどうかの確認がされ、要件を満たした場合、手当金が支給されます。
この手当金は、標準報酬月額を30で割り、標準報酬日額とみなし、要件を満たした日について、標準報酬日額の3分の2の金額が支給されます。

障害を負った時、老齢となった時、死亡等の際には、やはり給付が行なわれます。
こちらの給付は、要件を満たした場合、比較的長期に補償が行なわれますので、支給形式が年金形式(1年当たりの金額の算定)で行なわれます。
この給付の年金計算の際に、標準報酬月額(及び標準賞与額)が利用されます。

ケガや病気、出産・育児の際の給付は、その時点の標準報酬月額で給付額が決まります。
※ケガや病気の際には健康保険の傷病手当金が対象となり支給要件を満たすと利用できます
老衰、障害や死亡時の給付は、それまでの平均標準報酬月額で給付額が決まります。

給付を受ける方の生活を大きく左右する結果に直結する標準報酬制度は、何よりも正確・確実に、慎重に手続きされ、記録される必要性のある事が上記からうかがえる事でしょう。
標準報酬月額の決定に伴う手続きは、社会保険制度上の手続きとなり、社会保険労務士の独占業務とされている理由がここにあります。

6.標準報酬月額の対象となる報酬

標準報酬月額を決定する際、その基礎とする給与(報酬)は、労働者が労働の対象として企業から受け取る全ての報酬とされ、給与、給料、賃金、手当、等の名称に関わらず、対象となります。

また、金銭(通貨)に限定せず、現物で支給されるものも含みます。

しかし、臨時に受けるものや年3回以下支給される賞与等は対象となりません。
また、退職金、解雇予告手当、慶弔見舞金等も対象となりません。

報酬に該当するものの例として、次の様なものが挙げられます。
基本給
諸手当(通勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当、皆勤手当、日直手当など)
割増賃金(時間外労働割増賃金、深夜労働割増賃金、休日労働割増賃金)
賞与(年4回以上支給されるもの)

報酬に該当しないものの例として、次の様なものが挙げられます。
賞与(年3回以下支給されるもの)⇒標準賞与額の対象
退職金、解雇予告手当
出張旅費、交際費
慶弔見舞金

現物で支給される報酬は、都道府県ごとの価額又は時価で算定に含めます。
また、労働の対象として支給される現物が標準報酬月額の対象となりますが、その範囲から除かれるものもあります。

報酬に該当しないもの現物の例として、次の様なものが挙げられます。
制服・作業衣
見舞品
生産施設と一体になっている住居

逆に報酬に該当する現物の例として、次の様なものが挙げられます。
通勤定期券(月額相当金額分)
食事・食券
社宅・寮
衣服(勤務服は除く)
自社製品

食事や住宅は、都道府県ごとに定められた価額により、報酬に算入され、その他の衣服等は時価で、報酬額に算入します。
ただし、食事や職権が支給されている場合は、全体の内3分の2以上の費用を本人が自己負担している時は、報酬に算入しません。費用負担が3分の2未満の場合は、標準価額から、自己負担額を除いた金額が算入の対象となります。 

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